アスペルガー症候群の診断基準

自閉症はどのように扱われてきたか

アスペルガー症候群の診断基準について理解するには、歴史的に自閉症がどのように定義されてきたかも知っておくとよいかもしれません。

 

自閉症は、カナーというアメリカの精神学者が1943年に定義しました。
大まかに解釈すれば、言葉の後れ(コミュニケーションに言葉を使わない)があり、周囲から孤立する傾向にある人たちだけを自閉症とみなしてきたのです。

 

一方、1981年には、イギリスのローナ・ウィングによって、アスペルガーというオーストリアの医師が1944年に刊行した論文が英米にも紹介されます。

 

アスペルガーの論文には、知力が低いわけでなく、言葉の運用に際だった問題があるわけでもないが、社会的に不適切な発言やふるまいをする子供たちに関する臨床経験が書かれていました。

 

ウィングは、カナーの定義した自閉症にアスペルガーの報告したケースを統合し、さらに自閉症が軽度から重度までの連続(スペクトラム)したものであるとの考え方を示しました。

 

これが現在でも広く採用されている自閉症の概念です。

 

つまり、現在アスペルガー症候群と判断されるケースが昔は自閉症とはみなされておらず、社会的関係性を構築しづらい特性やコミュニケーション能力の低さが障害とは判断されなかったために、適切な対応プログラムも存在しなかったのです。

 

診断基準の柱となっているもの

このため、現在は次の3つの障害について、これらがセットで認められるときに自閉症と診断されます。

 

  1. 他の人との社会的関係をもつこと
  2. コミュニケーションをすること
  3. 想像力と創造性

 

アスペルガー症候群であるかどうかは、ここからさらに詳細な診断基準によってふるいにかけられます。

 

いずれにせよ、どのような障害があるか判断することは、それらの障害に対する適切なプログラムを適用するための行為です。

 

診断名を特定することが大事なのではなくて、障害に対して何をすべきか明らかにすることが最も重要視されています。

 

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